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【クラトリ】CRACK≡TRICK!【レビュー】

作品情報

メーカー:CRYSTALiA
価格:3,400円
クリア時間:9時間
販売サイト:R18作品なので未記載

シナリオ

SFを掛け合させた上質なミステリーADV。
R18作品ではありますが、あまりにも面白かったので紹介させてください。

次々と不審死するフォルガン家の謎を解け

世界を牛耳る程の規模を持つフォルガン家。
しかし、当主が危篤状態になってから親族が次々と不審死を遂げるようになります。

そして、最後に残ったのがフォルガン3姉妹でした。
このままでは私たちも殺されるだろう。長女のアデーレは一縷の望みをかけて元同級生で探偵のハヤテに助けを求めたのです。

不可解な死因。そして、死の間際に現れる深紅の貴婦人。互いを信頼していない3姉妹。
更に舞台は大豪邸とミステリー作品として申し分のない設定でした。これでワクワクしない人間はいない。

本作は周回システムになっており、やりなおす度に事件の様相は大きく変わっていきます。
しかし、「3姉妹の死」という結末はいつも同じ。果たしてどうやって彼女たちを救うのか。

アデーレの依頼にもありますが、真実の追及だけでなく3姉妹の護衛も重要な使命です。

閉鎖空間で起こる連続殺人事件はミステリー好きにたまらない。プロローグからどんどん物語に引き込まれてしまいました。

脳に埋め込まれた通信機器「エクステンド」

本作をSFたらしてめいる重要キーワード。
元々は医療用の技術だったものに通信機能を搭載し、今ではスマートフォン以上に普及しています。

また、一部の人間は固有機能(ユニーク)を発現し、特定分野において超人的な能力を発揮すると。

タイトル「CRACK≡TRICK」はここから来ており、本作はクラッキングを用いたトリックが目白押しになっています。
助手のセラフィナからして優秀なハッカーですからね。彼女の前でセキュリティは意味を成しません。

緩急のつけ方が絶妙。笑いあり熱さありの傑作シナリオ

テンポのよい掛け合いが続き、ダレることが一切ない。9時間程度で終わるのも個人的には好き。
シリアスパートを阻害しない程度のギャグパートも面白い。ハヤテとセラフィナの漫才コンビが素晴らしいんだよね。

普段はおちゃらけつつも大事なシーンではしっかり締める。シナリオライターの技を感じました。

なお、若干のネタバレになりますが、本作はハッピーエンドにはなりません。
冒頭からほとんど死んでいますからね。そらそうだろうと。

とはいえ、バッドエンドでもありません。一体どんな結末になるのか。ぜひご自身でプレイしてみてください。

メインキャラクター

ハヤテ・キサラギ

教育機関アカデミーを首席で卒業した自称「場末の探偵」。

彼の固有機能「オーバークロック」は体感時間を引き延ばし、短時間で膨大な思考を可能とします。

特に探偵業との相性が素晴らしく、解決の糸口が少しでもあれば速攻で謎を解きます。銃弾の先読みも可能らしい。ホンマか?

クールな言動はしているものの意外と熱血で情も深い。
文武両道でアンガーマネジメントも完璧。まさに理想のカッコイイ主人公でした。

セラフィナ・グラシャーニ

ハヤテを慕う元気娘で、彼に負けず劣らずの天才少女。
固有機能「クロス・コネクト」を用いれば、複数のタスクを同時にかつ完璧にこなすことが可能。ドローン10体程度の操作は造作もありません。

監視カメラの設定や扉の開錠など彼女がいないと詰む場面が多い。考えるのはハヤテの仕事で、そこまでの準備はセラフィナの役目と言ったところでしょうか。最高のバディですな。

本作のムードメーカーでもあり、彼女がいれば暗い雰囲気も一気に明るくなります。

3姉妹の感想・考察(ネタバレ)

ここからは物語の鍵を握る3姉妹の紹介です。
シナリオの関係上、ネタバレなしで話せません。クリア後に読んでください。

アデーレ

結局は彼女も傲慢なフォルガン家の女性だったわけですが、愚かなわけではありません。エミーリアをモノ扱いしていたのはフォルガン家なら当たり前であり、性格の悪さも自認しています。自由に生きるハヤテと出会ったことで良い方向に成長していたのは間違いないでしょう。彼に助けを懇願したのがその証。誰かに弱みを見せることは今迄の彼女ではありえないことでした。

アデーレ犯人ルートのラストで「それだけが、私の意思なの」と言っており、デウス・エクス・マキナに操られていたことは承知済み。間違いなく才女でした。
助かる条件が「エミーリアに優しくすること」というフォルガン家の人間にとっては詰み状態なのが可哀そうではある。

ディートリンデ

最初から最後までクズで笑う。
大富豪の次女にありがちなコンプレックスの塊であり、自制の効かない愚鈍な娘。
アデーレからは格下の烙印を押されており、それがまた彼女のプライドに傷をつけていました。

エミーリアへの態度も酷い。自分のために自殺を促したりアデーレに利用されて彼女を騙そうとしたりと情など欠片もない。
温厚なハヤテをマジギレさせるあたりどうしようもありません。

意外と素直で正しい意見は無下にせずに受け入れる点だけが彼女のプラス描写でした。こういうワガママ娘を更生させるシナリオがあると思っていたので、容赦のない死亡報告にちょっと笑ってしまった。

エミーリア

アデーレの祖父から産まれた隠し子であり、アデーレの叔母に位置する女性。
幼少期からエクステンドの人体実験をさせられた結果、成長がストップ。実験終了後の彼女にはデウスエクスマキナの完成品としての価値しかなく、人間とは思われていません。

あまりにも惨い人生で流石に絶句してしまった。そらフォルガン家を皆殺しにするわ。

唯一の理解者が同じく隠し子のリーゼなのは皮肉と言うかなんというか。
エミーリアに未来を残せたのが本作唯一の救いだったかもしれません。いやー、でもきついっす。

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