【粗筋】痣【感想】~亡き妻の痕跡を追って~

作品情報
作者:伊岡瞬
出版社:徳間文庫
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雑感
王道の刑事小説として満足のいく完成度。
殺害方法が凄惨なので、人によってはきついかもしれません。
真壁の過去を中心に、警察組織内のいざこざもあり。
ラストも本書にふさわしく、最後まで一気に読めました。
真壁と宮下のバディの活躍も楽しみの1つです。
粗筋
真壁の退職直前に発生した全裸美女冷凍連続殺人事件。
なぜか事件現場には真壁の亡き妻の痕跡が残されていた。
妻は殺され、犯人は死んだはず。
もしかして事件は終わっていなかったのか。
刑事の誇りを失っていた真壁だったが、何かに誘われるかのように事件に向き合うことになる。
登場人物
妻が殺害された事件以降、覇気を失った刑事。
元々は野良犬の異名を持ち、凄腕として表彰された過去もある。
若手刑事。人と目を合わせて話せず、どこか頼りない印象。
しかし、語学堪能で、警察内の交友関係も広く、真壁のよき相棒として活躍する。
真壁に感情移入すると本作の面白さは何倍にもなる。
妻を失った悲しみから牙を失った真壁。
それでも事件を通して妻との過去を思い出し、前を向くようになります。
亡き妻との対話の節々に彼本来の優しさが見え、彼をどんどん好きになることでしょう。
最後には本来の自分を取り戻せるのか。ぜひ最後まで読んでみてほしい。
事件
凄惨な猟奇殺人
あまりにも鬼畜の所業。
猟奇殺人をテーマにした「殺意の輪郭」に負けず劣らずの胸糞事件でした。
更に警察組織を挑発する証拠をいくつも残し、犯人の悪意が嫌でも見えてきます。
むごたらしい事件が好きな人にちょうど良い内容と言えるでしょう。
じわじわと真実に近づく楽しさ
実に刑事小説らしい展開を楽しめます。
次々に見つかる死体。メッセージ性のある物的証拠も多数残します。
いったい犯人の目的は何なのか。
読者は真壁と同様に真実を知りたくなり、読む手が止まらなくなります。
情報の出し方が絶妙なんですよね。先が気になるんですわ。
クライマックス
あ、そうくるかあ。
疑いのある人物がどんどん出てくる中、ついに現れる真犯人。
犯人は予想できる人もいるでしょう。
しかし、動機を分かった人はいないでしょう。
あまりにも予想外の動機。
様々な事件が絡み合った末の結末に開いた口がふさがりませんでした。
まあ、救いはねえよなぁ。なんでこんなことになったんやと。